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IHIグループ 明星電気㈱

勤務地
中毛
業種
電気・通信

2024年10月5日

気球で長時間気象観測 低コスト、成層圏でも稼働 明星電気が開発▪上毛新聞(2024/10/5)より

IHIグループで観測機器メーカーの明星電気(伊勢崎市長沼町、夏明正伸社長)が、従来の方法よりも台風などの気象データを低コストで簡便に収集できる成層圏観測プラットフォームを開発した。気象用小型ゴム気球で飛ばし、気球内のガスを抜いたり、重しとなる物質を落としたりして高度を保ち、24時間以上の観測を可能とする。気象観測などを実施する研究機関や民間企業のほか、人工衛星分野にも売り込みたい考え。

開発されたプラットフォームは高度維持装置と、衛星利用測位システム(GPS)を搭載したユニットで構成される。用途に合わせて気象データを分析するセンサーやカメラなどを取り付け、気球で飛ばし、高さ約20キロメートルの成層圏に滞空させて利用する。氷点下60度にもなる成層圏でも稼働するように部品を改良するなどした。
気象データの収集は現在、気球を使った上空の測定機器「ラジオゾンデ」が主力だ。観測時間は気圧によって気球が破裂するまでの約2時間だが、開発されたプラットフォームは24時間以上となる。
活用方法の一例では、台風周辺の気温、湿度、気圧などの情報収集を想定。これまでは航空機で台風の上空を飛行し「ドロップゾンデ」と呼ばれる機器を落下させて観測する方法だが、費用が数千万~数億円と大きく、航空局の許可が必要であるなど難点がある。
今回のプラットフォームで使われる小型気球は航空規則上は軽気球に分類され、同局への手続きは申請で済む。費用は、最低数百万円から実施できる見通しで、より迅速で手軽な手法となる。気象データが多く集まれば、台風の進路や線状降水帯の発生予測などの精度向上が期待できる。
また、プラットフォームに取り付ける機器次第で、長距離通信の中継、リモートセンシングといった通常人工衛星などを使う分野にも低コストで応用できる可能性がある。既に複数の国内企業から試験実施などの申し込みがあるという。試験的なサービス提供を実施しながら改良や性能の向上につなげる。
新事業開拓を目的とした同グループの若手社員による会議で、今回のプラットフォームのアイデアが生まれた。2020年から開発を進めてきた。同社は「社会課題の解決に取り組み、新たな価値を創造していく」と力を込める。