2024年9月19日
高崎の「井ノ上」 「文化保全型」の事業開始 白衣観音 観光ツアー▪上毛新聞(2024/09/19)より
高崎市石原町の慈眼院にそびえる高崎白衣大観音を観光資源として活用しようと、同市の建設業「井ノ上」(井上幸己社長)が、観音山と市街地を回遊する「文化保全型アーバンツーリズム」の取り組みを始めた。市や市内の大学、法人などと連携して観光ツアーを商品化し、売り上げの一部を観音像の修復費に充てる。同社の担当者は「ツアーを通して白衣観音に興味を持ってほしい」と話す。
◎観音山と市街回遊 売り上げ修復費に
観音像は1936年、同市の実業家、井上保三郎が高崎15連隊の戦没者の慰霊と市の発展を願って建立した。高さ41・8メートル、重さ約6千トンで高崎のシンボルとして広く親しまれている。上毛かるたで「白衣観音慈悲の御手」と詠まれている。
井上社長は保三郎のひ孫。観音像の建立100年に向け、同社の取り組みを地域の観光コンテンツ造成を目的とした観光庁の「地域観光新発見事業」に申請し、今年5月に採択された。同庁によると、コロナ禍後に観光需要が回復する中、観光客の宿泊先はインバウンド(訪日客)を中心に三大都市圏に集中しており、同事業によって地方への継続的な来訪を促す。
市内で創出するコンテンツの具体的な内容は、パスタの祭典「キングオブパスタ」での試食、白衣観音胎内巡りと写経、ホテルメトロポリタン高崎の特別室SL「D51」ルーム宿泊体験など6種類を盛り込んだ都市回遊ツアー。
群馬交響楽団と協働したナイトコンテンツ造成や、少林山達磨寺(同市鼻高町)を組み込んだ周遊ルート開拓なども検討している。高崎商科大の学生が体験するプレモニターツアー、英語圏に対応した解説本の製作やガイド養成も行うという。
観音像を管理する慈眼院の橋爪良真(りょうしん)住職は「白衣大観音は人々の心のよりどころとして親しまれ米寿を迎えた。建立100年を前に基金を立ち上げたが、修復や修繕に十分とは言えない。高崎ならではの魅力を感じていただき、市内外の方々にさらに関心を寄せてほしい」としている。
同社によると、11月に群馬音楽センター(同市)で「都市観光と建築文化財の保全」をテーマにシンポジウムを開催する予定。担当者は「建設のみではなく、建設に関わるソフト事業にも携わっていきたい」と話している。