2025年8月1日
《インタビュー》沢藤電機 下山泰樹社長(62) 電動、化多様な技術開発・上毛新聞(2025/7/26)より

バスやトラックといった商用車向けの電装品のほか、発電機、冷蔵庫の製造を手がける沢藤電機(太田市新田早川町)の新社長に下山泰樹氏が就任した。自動車業界が100年に一度の変革期とされる中、商用車も変化が求められている。抱負や業界での強み、電動化対応など今後の事業展開を聞いた。
―トップとしての抱負を。
自動車業界が「CASE(ケース)」=ズーム=の時代と言われる中、商用車や建機が電動化する時代が来るのを見越し、井上雅央前社長と「沢藤電機を電動システムサプライヤーに変革する」との思いで取り組んできた。前社長からの事業ポートフォリオの変革を、空白なくけん引することが私の役割だと考えている。
―商用トラックの電動化の現状は。
小型トラックは国内各メーカーが電気自動車(EV)をそろえるなど電動化の波が来ている。一方、大型トラックは、あの規模を電気だけで動かすのは技術的に難しい。稼働時間、走行距離も長く高電圧になるため、モーターやインバーターなど対応する技術を研究している。EVにとらわれず、水素エンジンなどさまざまな選択肢を含めて進めていきたい。
―商用車に架装するクレーンなどを電動化するシステムを開発している。
クレーン車や高所作業車を動かす油圧のギアポンプを、電動で回す機構を開発した。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)や、排ガスを出さず静かに作業したいというニーズもある。製品の投入は車両の電動化に合わせて少し先になるので、品質コストを含めて競合他社を意識して磨き上げていく。
―商用車市場と会社の強みをどうみているか。
商用車市場は台数ベースでは乗用車ほど大きくないが、物流という社会活動に携わる領域で確実かつ安定的だ。働く車の稼働を止めないことが大きな役割と考え、長寿命をテーマに設計し、信頼を得てきた。商用車は10年、20年と長い期間使ってもらうのが当たり前。最後までメンテナンスし、安心という期待に応えていきたい。将来的には部品の交換だけでなく、ソフトウエアを随時更新する世界は来ると考えている。
―2024年は創立90周年、26年は太田市に拠点を移して半世紀を迎える。
25年度から第2の創業期と位置づけ、3カ年計画を検討している。われわれがお客さまに何を期待されているのか、いま一度地に足をつけて考える時期だ。早速、2回にわたり組織再編を行った。製造や調達、営業など部門を近づけ、会社全体で収益にどうつながっているか一気通貫で見えるようにした。社員のモチベーションや収益改善意欲につなげたい。(茂木勇樹)
【ズーム】CASE
「C」コネクテッド(インターネットと接続された自動車のデータ活用)、「A」自動運転、「S」シェアリング・サービス、「E」電動化の頭文字で、業界における四つの革新的な技術、サービスを示した造語。
【略歴】 しもやま・やすき 東京都出身、日本大卒。デンソー出身。2021年に沢藤電機顧問に就き、取締役専務執行役員を経て6月20日から現職。