2025年8月8日
《インタビュー》ヤマダホールディングス 上野善紀社長(53)・上毛新聞(2025/8/8)より

家電販売最大手のヤマダホールディングス(HD、高崎市栄町)の新社長に上野善紀氏(53)が就任した。トップとしての抱負のほか、4月に新たに始まった5カ年の中期経営計画(中計)を軸とする出店構想や商品開発、海外展開の構想などについて展望を語った。
―社長就任の抱負を。
会社の文化を継承しつつ、時代に応じた経営の工夫を進めて新たな中計を達成するのが私の使命だ。それが創業者の山田昇会長に対する恩返しでもある。
―2030年3月期までに売上高2兆2千億円を掲げているが、達成に向けどんな展望を描いているか。
グループ会社が一体となって展開する「くらしまるごと」戦略を推し進めたことで、家電を中心に金融、住建など衣食住のサービスをワンストップで提供できるようになった。これはハウスメーカーの中でもヤマダHDにしかできない強みでもある。
家電や家具などがそろう大型店「ライフセレクト」の出店を加速させ、現在の39店舗から80店舗まで増やし、ライフセレクト単体の売り上げも2千億円から5千億円を目指す。これが中計の大本の柱だ。出店が増えれば住宅やそれにひも付く金融、リフォームなどの需要も伸びていく。
―人口減少が進む中でエリア戦略も重要では。
ライフセレクトを出店するだけでなく、ヤマダデンキも含めた店舗の統廃合を進めている。今は出店より閉店の方が多い。ただ、店舗全体の売り場面積は25年3月期時点で、前期と比べて約2万2千平方メートル増えている。1店舗当たりの品ぞろえが増えて、販売効率やお客さまの利便性も向上している。
―プライベートブランド(PB)、自社オリジナルブランド商品(SPA)の開発にも力を入れている。
4月にオリジナルのドラム式洗濯乾燥機「RORO(ロロ)」を発売した。下期からPBもSPAもどんどん増えていく。5年後には家電事業の売り上げ構成比の15%(3千億円)を占める見込みだ。家電量販店はどこも同じ商品を扱っているが、オリジナル商品は他社にはない。原価が安い海外メーカーと提携すれば利益も残せ、消費者が必要とする最低限の機能を盛り込みつつ適正な価格設定もできる。
―海外戦略は。
現在シンガポール、インドネシア、マレーシアに計29店舗を出している。今後5年間でインドネシアを中心に90店舗まで増やす。特にインドネシアは人口が増え、GDP成長も著しく経済成長の過渡期にある。市場調査を進めて地盤を固め、法人ビジネスの開拓やポイントシステム展開によるデジタル戦略の強化を図り、“第2の創業の地”としたい。
―トランプ米政権の関税措置の影響は。
最終製品の価格転嫁に影響が出る可能性が全くないとは思わないが、そこまで大きくはないだろう。関税のような外部要因があっても新たな中計は達成できる内容になっており、達成しなければならない。