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2025年12月12日

《宇宙への羅針盤 IHIエアロスペースの25年(3)》戦略 鍵はイプシロンS 進化目指し挑戦「中間需要」狙う

内閣府によると、2024年度の世界全体のロケット打ち上げ本数は10年前の約2・7倍(253本)に増加している。世界の宇宙ビジネス市場は商業衛星の打ち上げ需要拡大を背景に民間参入が進み、競争が激化。年間130本を打ち上げるスペースX(米国)や中国の宇宙開発機関「国家航天局」などがしのぎを削る。日本国内のベンチャーの動きも活発だ。衛星打ち上げ輸送サービス市場へ本格参入を計画するIHIエアロスペース(IA)は“ロケット戦国時代”を勝ち抜くために、どのような戦略を描くのか。
世界の宇宙ビジネス市場は規模拡大を続け、40年代に1・1兆ドル(約170兆円)に達するとの試算もある。現在、上空約3万6千キロの軌道を周回する気象衛星「ひまわり」などとは異なり、上空500キロ前後の低軌道に複数の衛星を乗せて一体的に活用する「低軌道コンステレーション」が主流となっている。特に50機前後で展開する地球観測向けと、1千機以上を連携させるインターネット通信向けの需要が多いという。
輸送能力が20トン以上あるスペースXの「ファルコン9」など大型ロケットは、大型・大量の衛星を安価に輸送できるのが強みだ。ロケット・ラボ(米国)の「エレクトロン」など0・3トン程度の小型ロケットは小型・少量の衛星の打ち上げに適している。
一方、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導し、IAが開発を進めるイプシロンロケットシリーズの最新型「イプシロンS」は、輸送能力1・2トン以上でやや小さめの中型。例えるなら、ファルコン9が「大型バス」でエレクトロンが「軽自動車」、イプシロンSは「ミニバン」というイメージだ。
矢木一博取締役(54)はイプシロンSの特徴を挙げ、地球観測向けの低軌道コンステレーション市場に食い込めると説く。「例えば、これまで1機ずつだったのが4機程度の衛星をまとめて運ぶ(大型と小型の)中間のような需要がある。そこを狙う」
大型ロケットは運賃が安いが複数の顧客の衛星が相乗りするため、他社の開発待ちなどで打ち上げの日程や軌道を自由に選べない不便さがある。イプシロンSは、この点で柔軟に対応できるのも強みだ。
ただ、イプシロンSは開発が難航している。第2段モーターの燃焼試験の失敗が続き、昨年11月、種子島宇宙センター(鹿児島県)での再試験で起きた爆発は世間に衝撃を与えた。従来の「イプシロン」の第2段エンジンを使うことも検討するなど、打ち上げに向けた道筋は不透明だ。
それでもIAは成功を諦めていない。矢木取締役は「世界最高のロケットを開発する挑戦の過程で起きた失敗だ。この経験を乗り越え、イプシロンSを世界でも競争力の高いロケットに進化させて市場に送り込む」と力を込める。