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2025年12月12日
《宇宙への羅針盤 IHIエアロスペースの25年(4)》技術 有望なメタンエンジン 研究20年以上 性能に手応え
少し先の話だが、IHIエアロスペース(IA)を含むIHIグループが20年以上温めてきた技術が実用化される可能性がある。メタンが主成分の液化天然ガス(LNG)を燃料とする「メタンエンジン」だ。ロケットの機体の軽量化や低コスト化も実現できるため、各国が開発に乗り出しており、一部で既に実用化が始まっている。
メタンは多くのロケットエンジンで使用される水素と比べて、①燃費が良い②密度が高いのでコンパクトな機体設計が可能③揮発しにくく長期保管できる④爆発の危険性が低く扱いやすい―などの利点がある。
矢木一博取締役(54)は「メタンは水素に比べて宇宙空間で蒸発しにくい。火星ではメタンを現地生産もできる」とし、深宇宙の探査をする上で有望な燃料であると説く。
IHIグループは宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、世界に先駆けてメタンエンジンの開発に取り組んできた。2009年に液体酸素とメタンを燃料とした実機仕様のエンジン「LE―8」の燃焼試験に成功し、官民共同開発の中型ロケット「GX」に搭載する計画だった。
しかし同年11月、民主党政権による行政刷新会議の事業仕分けで、巨額の国費を投入してGXの開発を続けることが「不適切」と判定され、実用化に至らなかった。実際に飛翔(ひしょう)していれば世界初のメタンエンジン搭載ロケットとなっただけに、当時の関係者は「国の決定でやむを得ないものの悔しい思いだった」と振り返る。
だが、その後も研究を続けてメタンエンジンの基盤技術を確立。現在も高性能なタイプの開発を進めている。矢木取締役は「(開発が始まった)当時よりずっと性能が高い」と手応えを語る。
IAはこれまでも国際的な宇宙探査プロジェクトに独自の技術を提供している。
10月下旬、国際宇宙ステーション(ISS)へ食料や水などの物資、機材を運ぶJAXAの新型無人補給船「HTV―X」が打ち上げられ、世間の注目を集めた。ここで提供したのが、補給船の軌道変更や姿勢制御を担う小型ロケットエンジン「スラスタ」だった。
スラスタは先代の補給船「こうのとり」でも採用されており、「開発は相当大変だった」(杉村文隆宇宙利用開発部長)という開発者たちの努力と苦労の結晶だ。
HTV―Xは20機以上のスラスタを搭載し、これらを個別に動かし連係させることでISSと無事に結合した。米国主導の国際月探査計画では、月の軌道上に建設が検討されている有人基地「ゲートウェイ」への物資補給を任されており、IAの技術は人類の宇宙利用のさらなる発展に貢献する。
