㈱IHIエアロスペース

勤務地
西毛
業種
機械・金属

2024年9月5日

エンジン部品量産強化 航空機にロケット技術 富岡・IHIエアロ ▪上毛新聞(2024/09/05)より

本社を東京都内から4月に移転した宇宙関連機器メーカー、IHIエアロスペース(富岡市藤木、並木文春社長)は、ロケット製造の宇宙事業で培った技術を生かし、航空機複合材事業で手がける軽量化したエンジン部品の量産体制を強化している。同社が事業の柱とする宇宙、防衛、航空の3分野において後発の航空事業を伸ばし、強靱(きょうじん)な経営基盤の構築を狙う。
同社は本県ゆかりの中島飛行機の発動機工場(東京都)をルーツに、日産自動車の宇宙航空部門として1998年に富岡事業所を開設。約49万平方メートルの敷地に宇宙、防衛に加え、2014年に航空事業専用の第3工場を設け、本格的に事業を開始。同年と比べ、23年の売上高は約9倍に伸びた。
同社が宇宙事業で製造する小型ロケット「イプシロン」のロケット本体や、国産新型ロケット「H3」など打ち上げ推進のための固体ロケットブースターで使用している素材は、軽くて強度がある繊維強化プラスチック(FRP)。航空機エンジン部品に用いられる一般的なアルミ製と比べ機体を軽量化できる。燃費向上による二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながる。
本社工場で製造しているのが、航空機の両翼にあるエンジンを覆う直径約2メートルのファンケースと、回転翼のファンブレード。ファンケースはFRP製で、原材料の炭素繊維を型に巻いて窯で焼き固める工程は、固体ロケットブースターの製造技術を生かした。製造工程をカメラで記録し、不具合の原因究明や作業改善につなげ、品質向上や作業を効率化するため、ロボットの導入など工場全体の自動化を進めている。
約1カ月かけ完成するファンケースは年間1100台製造。親会社のIHI(東京都)相馬工場(福島県)で製造したケースを支え風向きを整える48枚のガイドベーンをファンケース内に取り付けた製品と、エンジン1台当たり20枚使用するファンブレードを出荷する。各製品はIHIが米国エンジンメーカー大手のプラット・アンド・ホイットニー社に納品。欧州のエアバス社の航空機エンジンに搭載されている。
生産センターの重成有技師長(57)は「ロケットの性能を上げるために蓄積された技術を生かし、自動化や効率化を進めて事業を成長させたい」と話す。