2025年10月10日
豪企業と衛星共同研究 IHIと明星電気 海域監視能力の強化向け・上毛新聞(2025/10/9)より

防衛・産業関連への活用を目的に、宇宙空間で複数の衛星を一体的に運用する「衛星コンステレーション」の構築を計画するIHI(東京都、井手博社長)と、傘下で観測装置製造の明星電気(伊勢崎市、夏明正伸社長)は、豪州の衛星メーカーと小型衛星の技術実証に関する共同研究契約を結んだ。2027年末までに実証を完了し、日豪両国間の海域監視能力を高めて安全保障体制の強化につなげる。同じく、IHI傘下のIHIエアロスペース(富岡市、並木文春社長)の衛星打ち上げサービスの提供も検討する。
IHIは30年ごろをめどに、精度の高いさまざまな地表観測データを集めるため、最大100機程度の小型衛星による観測網を構築する。これまで、地球観測の他に情報収集や監視、偵察などを目的とした衛星を開発する欧州の宇宙関連企業と協力体制を築いてきた。今回の提携もその一環で、豪州で1日開かれた国際宇宙会議の場で、3社の署名式が開かれた。
共同研究はIHIが全体の調整役を担う。豪州の衛星メーカー「イノバー・テクノロジーズ」が、小型衛星の基幹部分の製造開発や宇宙空間での各種試験を行う。
明星電気は数々の宇宙探査プロジェクトを支えてきた高度な技術力と経験を生かし、船舶の追跡や偵察など海洋監視に適したセンサーを開発する。担当者は「今回の技術実証への参加もこれまでの実績を買ってもらった結果。実際の性能を宇宙で確かめられる機会は我々にとっても貴重で、新たな事業展開にもつながる」と意気込んでいる。
IHIエアロスペースは、世界規模で需要が拡大する小型衛星の打ち上げ市場への参入が決まっており、輸送用ロケットの開発を進めている。IHIは、衛星の打ち上げ時期とタイミングが合えば「(IHIエアロスペースの)打ち上げサービスの提供も検討する」としている。
日豪は近年、宇宙や防衛分野の協力関係を背景に、両国間の海域監視体制の強化を進めている。